結論:アラスカン・マラミュートの「昼盲(ちゅうもう)」=錐体変性症(cone degeneration / 全色盲・アクロマトプシア、CNGB3)は、生後 8〜12 週で始まり、明るい昼間だけ見えず、薄暗い場所では普通に見えているという、飼い主が最も見落としやすい形で現れます。原因はこの犬種では CNGB3 遺伝子がまるごと欠失していることで、Yeh ら(2013, BMC Genetics 14:27)が第 29 染色体上の 404,820 塩基対という正確な長さまで特定しています。遺伝形式は常染色体劣性で、保因犬は無症状のまま次世代へ渡します。ただし本記事で最も重要なのは、遺伝子検査が「クリア」でも昼盲が否定できない犬がいるという一点です。Seddon ら(2006, Animal Genetics 37:407-410)がオーストラリアの 3 世代家系を調べたところ、臨床的に昼盲を示した 15 頭のうち 6 頭では CNGB3 のエクソン 6 が正常に増幅された——つまり全遺伝子欠失のホモ接合ではありませんでした。日本国内では Orivet Japan など自宅スワブ・円建て決済の検査サービスで検体を出せますが、検査は「繁殖判断のための情報」であって診断ではありません。愛犬がまぶしがる・明るい屋外でぶつかる・目を細めるなどの様子があれば、まずかかりつけの動物病院へ、必要に応じて獣医眼科の専門医または獣医大学の附属動物病院での網膜電図(ERG)検査へつないでください。
「夜は平気なのに、昼だけ壁にぶつかる」——飼い主が最初に気づくこと
犬の網膜には 2 種類の光受容細胞があります。桿体(かんたい)は暗い場所で働き、錐体(すいたい)は明るい場所と色の識別を担当します。錐体変性症で壊れるのは錐体だけで、桿体は正常なまま残ります。
この「片方だけ壊れる」構造が、症状の出方をきわめて特徴的にします。Yeh ら(2013)は臨床像を、犬の網膜発達が完了する生後 8〜12 週で昼盲が顕在化するとまとめています。具体的には次のような形で現れます。
- 昼盲 — 明るい日中の屋外で物にぶつかる、段差を踏み外す、投げたボールを見失う
- 羞明(しゅうめい) — 強い光を痛がり、まぶしさを避けて目を細める・顔をそむける
- 眼振 — 眼球が小刻みに揺れることがある
- 薄暮・夜間は正常 — 夕方や室内では何の問題もなく動ける
飼い主が「性格」「気分」「集中力の問題」と解釈してしまうのはこのためです。散歩に行きたがらない時間帯がある、夏の日中だけ動きが鈍い、といった相談が、実際には視覚の問題だったというケースは珍しくありません。
そしてもう一つ、進行性網膜萎縮症(PRA)との決定的な違いがあります。PRA は多くの型で夜盲から始まって最終的に全盲へ向かうのに対し、錐体変性症は錐体を失った時点で進行が止まり、暗所視は生涯保たれます。愛犬は「見えない犬」になるのではなく、「明るいところが苦手な犬」として生きていきます。この違いは、飼い主が受け取る予後の説明としても、生活設計としても大きな意味を持ちます。
CNGB3 がまるごと消えている——40 万塩基の欠失
錐体が明るい光に応答するには、細胞膜上の環状ヌクレオチド依存性チャネル(cyclic nucleotide-gated channel)が必要です。このチャネルは α サブユニット(CNGA3)と β サブユニット(CNGB3)から組み立てられ、光刺激を電気信号へ変換する最終段階を担います。
Sidjanin ら(2002, Human Molecular Genetics 11:1823-1833)は、犬の錐体変性症がヒトの全色盲(アクロマトプシア)の ACHM3 座位とオルソロガス(相同)であることを示し、原因が CNGB3 にあることを突き止めました。同じ論文で報告された変異は犬種ごとに異なります。
- アラスカン・マラミュート(米国由来) — CNGB3 遺伝子の全エクソンを取り除く欠失
- ジャーマン・ショートヘアード・ポインター(ドイツ短毛ポインター) — エクソン 6 のミスセンス変異 c.784G>A(p.D262N)
同じ病気、同じ遺伝子、しかし変異の種類がまったく違うという点は、検査を申し込むときに実務上効いてきます。検査会社のメニューが「アラスカン・マラミュート型」「ポインター型」と分かれているのはこのためで、片方の型を調べても、もう片方は検出できません。OMIA(動物のメンデル遺伝データベース)の OMIA:001365-9615 は、欠失型の記録犬種としてアラスカン・マラミュート、アラスカン・ハスキー、ミニチュア・オーストラリアン・シェパード、シベリアン・ハスキーを挙げています。
2002 年の時点では、欠失の「長さ」も「隣の遺伝子まで巻き込んでいるか」も分かっていませんでした。その結果、保因犬を判定できないという深刻な実務上の穴が残っていました。欠失している染色体はそもそも増幅できないため、ヘテロ接合(保因)の犬は正常な方の染色体だけが増幅され、「クリア」と見分けがつかなかったのです。
この穴を埋めたのが Yeh ら(2013)でした。彼らは第 29 染色体上のブレークポイント(切断点)を両側から特定し、欠失長を 404,820 塩基対と確定しました。切断点をまたぐ PCR が設計できるようになったことで、保因犬をはじめて確実に判定できるようになった——これが今日の市販検査の土台です。
検査が「クリア」でも昼盲になった 6 頭——オーストラリアの家系が示したこと
アオイ遺伝子検査でクリアなら、もう昼盲の心配はしなくていいですよね? 森下 慧残念ですが、そう言い切れないデータがあります。オーストラリアの家系では発症犬 15 頭のうち 6 頭が検査上クリアでした。Seddon ら(2006)はクイーンズランド大学獣医学部から、オーストラリアのアラスカン・マラミュートの3 世代家系における昼盲を報告しました。この研究は、遺伝子検査の限界を理解するうえで本記事で最も重要な文献です。
家系の内訳はこうです。臨床的に昼盲の徴候を示した犬が 15 頭。うち 4 頭は標準化された網膜電図(ERG)で確定診断されました。研究チームが CNGB3 のエクソン 6 を PCR で増幅しようとしたところ、非発症犬と保因犬の 18 頭では予想どおり増幅に成功しました。ここまでは想定内です。
問題はここからでした。発症していた 15 頭のうち 6 頭でも、変異のないエクソン 6 が増幅され、配列が読めてしまったのです。全遺伝子欠失のホモ接合であれば、エクソン 6 はどこにも存在しないはずですから、増幅できるはずがありません。
研究チームは念のため、そうした発症犬 2 頭と非発症犬 2 頭について、全エクソンとエクソン/イントロン境界を配列決定しました。見つかったのは 3 か所のエクソン内置換と 12 か所のイントロン内変化でしたが、いずれも非発症犬の片方または両方にも存在しており、タンパク質の機能に明らかな影響を与えるものではありませんでした。
結論は明快です。オーストラリアのアラスカン・マラミュート集団における昼盲には遺伝的異質性がある——つまり CNGB3 欠失以外の原因でも同じ病気が起きている。著者ら自身が、この犬種の有効集団サイズが比較的小さいことを考えるとやや予想外の結果だと述べています。
飼い主にとっての意味は 2 つです。第一に、CNGB3 検査がクリアでも、愛犬の昼盲を否定する根拠にはならないこと。症状があるなら遺伝子検査の結果にかかわらず眼科的な評価が必要です。第二に、逆方向の誤解も避けなければなりません。検査は依然として有用で、既知の変異を繁殖から外すという目的においては確実に機能します。「検査は無意味だ」ではなく、「検査は既知の変異についてのみ答えを出す道具だ」というのが正確な理解です。
マラミュート、ハスキー、ミニチュア・オーストラリアン・シェパード——同じ 1 本の染色体
Yeh ら(2013)が扱った症例は、もともとアラスカン・マラミュートとは無関係の犬種でした。米国ユタ州で見つかったミニチュア・オーストラリアン・シェパードの 1 頭が昼盲を示し、遺伝子型を調べたところ、アラスカン・マラミュートで報告されていたのとまったく同じ全遺伝子欠失のホモ接合だったのです。しかも第 29 染色体上のブレークポイントは両犬種で完全に一致していました。
研究チームはさらに踏み込みました。オーストラリアン・シェパード、ミニチュア・オーストラリアン・シェパード、シベリアン・ハスキー、サモエド、アラスカン・スレッドドッグの血縁のない純血個体からプール DNA を作り、変異アレルの有無をスクリーニングしたのです。結果、シベリアン・ハスキー 1 頭とアラスカン・スレッドドッグ 3 頭が保因者として検出されました。
決め手はハプロタイプ解析でした。マラミュート、ミニチュア・オーストラリアン・シェパード、シベリアン・ハスキーの罹患染色体について、3.93 Mb の区間にある 147 個の SNP を遺伝子型判定したところ、3 犬種すべてで長さ 0.5 Mb の同一ハプロタイプが共有されていました。これは犬種を越えた連鎖不平衡の下限を定義する所見であり、著者らはこの変異アレルが IBD(identical by descent:由来を同じくする)である、すなわち単一の創始者に遡ると結論しました。
言い換えれば、この欠失は犬種が分かれるより前から存在していた可能性が高いということです。著者ら自身が「ミニチュア・オーストラリアン・シェパードはアラスカン・マラミュートと遺伝的に関連があるとは知られていないため、他の犬種も同じ cd アレルを持ち、罹患している可能性がある」と明記しています。マラミュートの飼い主にとっては、自分の犬の血統書に他犬種が現れないからといって安心材料にはならない、という含意になります。
この所見は、日本のマラミュートにとって他人事ではありません。国内の繁殖母集団が小さい犬種では、輸入個体や海外ブリーダー由来の血統に依存する度合いが高くなります。Yeh らが描いたのは「犬種の境界を越えて移動してきた 1 本の染色体」ですから、その移動経路には国境を越える輸入も当然に含まれます。さらに実務的なのは、同じ IBD ハプロタイプを共有すると報告された犬種のうち、シベリアン・ハスキーは日本でマラミュートよりはるかに広く飼われているという点です。将来この変異が日本で問題になるとすれば、入口はマラミュートだけとは限りません。
日本で検査を受けるには——検体、経路、通関
アオイ日本にいながら、この検査は受けられるんでしょうか。 森下 慧受けられます。国内で完結する自宅スワブのサービスと、動物病院経由、海外ラボへの発送の 3 経路があります。日本在住の飼い主が実際に取り得る経路は、大きく 3 つに整理できます。
(1)国内サービスで自宅スワブ。Orivet Japan(オリベット)は自宅スワブ方式の犬 DNA 検査を日本語・円建て・国内決済で提供しており、Amazon.co.jp でも購入できます。品種別セットと単項目の両方があり、対象となる遺伝性疾患の項目は犬種別ページで確認する形です。同様に Pontely や VEQTA といった国内サービスもありますが、錐体変性症(CNGB3)がメニューに含まれるかは各社の公式ページで個別に確認が必要です。犬種別パネルは「その犬種で頻度の高い疾患」を優先して構成されるため、日本での登録頭数が少ないマラミュートの項目が標準パネルに入っているとは限りません。
(2)動物病院経由。国内には獣医師を介して申し込む検査ラボもあり、この経路の利点は検体採取の確実性と結果の解釈にあります。スワブの採取が不十分だと再採取になりますし、返ってきた「保因」「クリア」という結果を診療方針に落とし込むのは獣医師の仕事です。
(3)海外ラボへ直接発送。Embark は健康項目の公開リストに 「Day Blindness, Cone Degeneration, Achromatopsia(CNGB3 Deletion, Alaskan Malamute Variant)」を明記しており、マラミュート型の欠失そのものを対象としています。この場合は検体(口腔スワブ)の国際発送が必要で、費用は米ドル建て、決済は海外カードになります。日本から発送する際は税関の扱いを事前に確認してください。生物由来検体の国際輸送は運送会社ごとに規定が異なり、書類の不備で止まると検体が劣化します。往復で 3〜6 週間程度を見込んでおくのが現実的です。
費用感は、国内の犬種別パネルが数千円〜1 万円台、海外の総合パネルが 1 万円台後半〜3 万円台(為替と送料込み)というのが目安ですが、価格は改定されるため必ず公式ページの現在価格を確認してください。いずれの経路でも、遺伝子型は生涯変わらないので検査は一生に一度で足ります。
結果を持って、どこへ行くか——日本の受診導線
遺伝子検査の結果は、それ単体では診療になりません。日本での現実的な流れはこうです。
まず、かかりつけの動物病院へ。「明るい屋外でぶつかる」「まぶしがる」という主訴を、できればスマートフォンで撮った動画とともに伝えてください。昼盲は診察室という屋内の照明環境では再現しにくいのが厄介な点で、飼い主が屋外で撮った 30 秒の動画が診断の決め手になることがあります。
次に、獣医眼科。確定には網膜電図(ERG)が必要になります。ERG は桿体由来の反応と錐体由来の反応を分離して記録できる検査で、Seddon らが 4 頭を「確定診断」できたのもこの検査によります。錐体変性症では明順応下の錐体応答が消失し、暗順応下の桿体応答は保たれるという、他の疾患と紛れにくいパターンが出ます。ERG は機器と鎮静管理が必要なため、実施できるのは獣医眼科を標榜する二次診療施設や、獣医大学の附属動物病院に限られます。かかりつけからの紹介状が前提になることが多いので、いきなり訪ねるのではなく、まずかかりつけに相談してください。
そして、生活の設計。この病気に治療法はありませんが、失うのは明所視だけです。散歩を朝夕の薄明時間帯に寄せる、直射日光下では犬用のサンバイザーやゴーグルで羞明を和らげる、屋内の導線を変えない、屋外では段差の手前で声をかける——といった環境調整で、生活の質は大きく変わります。「見えない犬」ではなく「明るさが苦手な犬」として設計するのが要点です。
ペット保険と繁殖——制度面で押さえておくこと
アオイ遺伝性の病気だと、ペット保険は使えないんでしょうか。 森下 慧多くの商品で先天性・遺伝性疾患は免責です。加入前に約款の免責条項を必ず読んでください。ペット保険。日本のペット保険の多くは、約款で先天性異常・遺伝性疾患を補償対象外(免責)としています。錐体変性症は生後 8〜12 週で発症するため、保険加入時点ですでに発症していることが多く、その場合は「既往症」としても除外されます。加入を検討しているなら、契約前に約款の免責条項を自分の目で確認すること、そして告知事項に該当する所見があるなら正確に申告することです。国内で契約数の多いアニコム損保やアイペット損保をはじめ扱いは商品ごとに異なるので、約款のなかで「先天性」「遺伝性疾患」「既往症」の 3 語を検索してから申し込むのが確実です。なお ERG などの検査費用については、診断目的の検査が補償対象になるかどうかも商品ごとに扱いが異なります。
繁殖と説明義務。日本では動物愛護管理法に基づき、犬猫を販売する第一種動物取扱業者に対して、購入者への対面での現物確認と対面説明が義務づけられています。説明事項には健康状態や遺伝性疾患に関する情報も含まれます。JKC(ジャパンケネルクラブ)の血統証明書は血統を証明するものであって健康を証明するものではありません——この区別は繰り返し強調しておく価値があります。子犬を迎える際に確認すべきは血統書ではなく、両親犬の遺伝子検査証明書そのものです。
マラミュートという犬種の事情。アラスカン・マラミュートは JKC の犬種別登録頭数で上位に入る犬種ではなく、国内の繁殖母集団は限られています。有効集団サイズが小さい集団では、劣性アレルが特定の系統に偏って濃縮されるのが定石です。「日本のマラミュートには少ないだろう」という推測には根拠がなく、Yeh らの IBD 所見が示すとおり、この変異は犬種と国境を越えて移動してきました。
遺伝子治療は「研究」であって、まだ「治療」ではない
この病気には現在、確立した治療法がありません。一方で、犬の錐体変性症はヒトの全色盲の動物モデルとして、視覚科学の中でも例外的に研究が進んでいる領域です。飼い主が過度に期待しないために、現在地を正確に書いておきます。
Komáromy ら(2010, Human Molecular Genetics 19:2581)は、CNGB3 変異を持つ 2 つの犬モデルに対し、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV5)を用いてヒト CNGB3 cDNA を錐体へ導入する遺伝子補充療法を実施し、機能的・構造的な回復を得ました。ただし決定的な制約が見つかります。生後 0.5 年未満の犬では有効だったのに対し、1 歳を超えた犬ではほとんど効果がなかったのです。
続く研究で、著者らは毛様体神経栄養因子(CNTF)を併用して錐体を一時的に「脱構築」させる手法を組み合わせ、すべての年齢群で錐体の機能回復を達成しました。長期追跡では最長 42 か月にわたる観察が報告されています。
これらはいずれも研究段階の成果であり、日本の動物病院で受けられる治療ではありません。犬の遺伝性網膜疾患に対する遺伝子治療が一般診療に降りてくる時期については、誰も確かなことを言えません。今日の飼い主にとって実行可能なのは、検査によって次世代への伝播を止めることと、すでに発症した犬の生活環境を調整すること——この 2 つです。
よくある質問
Q. 遺伝子検査でクリアだったのに、うちの子は明るいところでぶつかります。検査が間違っていたのでしょうか?
検査が間違っているとは限りません。Seddon ら(2006)のオーストラリアの家系では、臨床的に昼盲を示した 15 頭のうち 6 頭で CNGB3 のエクソン 6 が正常に増幅されており、この犬種の昼盲には遺伝的異質性があることが示されています。検査は既知の変異についてのみ答えを出す道具です。症状があるなら、遺伝子検査の結果にかかわらず眼科的な評価を受けてください。
Q. 保因(キャリア)と判定されました。この子は将来発症しますか?
常染色体劣性疾患の保因犬は発症しないと考えられています。意味を持つのは繁殖判断です。保因犬同士を交配すると、平均して 4 頭に 1 頭が罹患犬になります。保因犬をクリア犬と交配すれば罹患犬は生まれませんが、生まれた子の約半数が保因犬になります。
Q. 検査は何歳から受けられますか?何度も受ける必要はありますか?
遺伝子型は受精の瞬間に決まり生涯変わりませんので、年齢を問わず、また一生に一度で足ります。子犬のうちに調べておけば、その後の繁殖判断にも生活設計にも使えます。
Q. 進行して最後は失明しますか?
錐体変性症で失われるのは明所視であり、桿体が担う暗所視は生涯保たれます。夜盲から始まり全盲に至る進行性網膜萎縮症(PRA)とは、この点が根本的に異なります。
Q. 血統書があれば遺伝性疾患は大丈夫ですよね?
いいえ。JKC の血統証明書は血統を証明するものであって、健康や遺伝子検査の結果を証明するものではありません。確認すべきは血統書ではなく、両親犬の遺伝子検査証明書そのものです。
Q. 日本の検査サービスのパネルに「錐体変性症」が見当たりません。
犬種別パネルは、その犬種で頻度の高い疾患を優先して構成されます。日本で登録頭数の少ない犬種の項目は標準パネルに含まれないことがあります。単項目での受託が可能か各社に問い合わせるか、当該変異を明示している海外ラボへの発送を検討してください。その場合は税関での扱いを事前に確認してください。
Q. ジャーマン・ショートヘアード・ポインター用の検査を申し込めば、マラミュートも調べられますか?
できません。ポインターの変異はエクソン 6 のミスセンス変異 c.784G>A、マラミュートの変異は遺伝子全体の欠失で、検出方法がまったく異なります。申し込む際は「アラスカン・マラミュート型(欠失)」を対象としている検査かどうかを確認してください。
Q. 昼盲の犬を飼うのは大変ですか?
環境調整でかなり対応できます。散歩を朝夕の薄明時間帯に寄せる、日中の屋外では羞明を和らげる、屋内の家具配置を変えない、といった工夫が中心です。暗いところでは普通に見えているという点が、この病気の数少ない救いです。
アイキャッチ画像: Alaskan malamute 2021 05 (Wojciech Pędzich / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)
参考文献
- Sidjanin DJ, Lowe JK, McElwee JL, et al. Canine CNGB3 mutations establish cone degeneration as orthologous to the human achromatopsia locus ACHM3. Human Molecular Genetics. 2002;11(16):1823-1833. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12140185/
- Yeh CY, Goldstein O, Kukekova AV, et al. Genomic deletion of CNGB3 is identical by descent in multiple canine breeds and causes achromatopsia. BMC Genetics. 2013;14:27. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3639114/
- Seddon JM, Hampson EC, Smith RI, Hughes IP. Genetic heterogeneity of day blindness in Alaskan Malamutes. Animal Genetics. 2006;37(4):407-410. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16879359/
- Komáromy AM, Alexander JJ, Rowlan JS, et al. Gene therapy rescues cone function in congenital achromatopsia. Human Molecular Genetics. 2010;19(13):2581-2593. https://academic.oup.com/hmg/article-abstract/19/13/2581/556373
- Online Mendelian Inheritance in Animals. OMIA:001365-9615 — Achromatopsia-3, CNGB3-related in Canis lupus familiaris. https://omia.org/OMIA001365/9615/
- Embark Veterinary. Health Conditions List(Day Blindness, Cone Degeneration, Achromatopsia — CNGB3 Deletion, Alaskan Malamute Variant). https://embarkvet.com/health-conditions-list/
- Orivet Japan(オリベット)犬の DNA 検査. https://orivet.jp/
- VEQTA 犬 遺伝性疾患 DNA 検査. https://www.veqta.jp/service/dog-test/
- LABOKLIN. Preiskatalog Genetik Deutschland, Januar 2026(8780 Cone Degeneration=ジャーマン・ショートヘアード・ポインター型 / 8166 Achromatopsie=ジャーマン・シェパード・ラブラドール型。マラミュートの欠失型はそのいずれとも別の検査). https://www.vrz-dhs.de/fileadmin/user_upload/pdf/labogen_preisliste/labogen_preisliste_1_2026.pdf
- 環境省. 動物の愛護と適切な管理(動物愛護管理法の解説). https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/
- 一般社団法人 ジャパンケネルクラブ(JKC). https://www.jkc.or.jp/
検査で調べるには
ペットのDNA検査には遺伝性疾患のキャリア(保因)やリスク指標を含むものがありますが、結果は「情報」であって診断ではありません。気になる症状や確定診断が必要な場合は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
この記事で扱う 錐体変性症・全色盲 (CNGB3) を、各サービスが検査対象として明記しているかを、お住まいの地域別にまとめました(✅=対象/❓=要確認(公式に明記なし)/❌=対象外)。
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